自作キーボードの世界において、今もっとも注目されているのがGATERON製の磁気スイッチと、それに最適化された高性能PCB「GT60 PRO」です。
このPCB Kitは、ただの「パーツの一部」ではありません。
8,000Hzポーリングレートや独自のアルゴリズムによるジッター排除処理など、プロレベルの入力精度を支えるコアとして、カスタムキーボードのポテンシャルを最大限に引き出してくれる存在です。
本記事では、そんなGATERON GT60 PROの魅力を、組み立てや使用感、ソフトウェア、そして実測値に基づく性能まで、徹底レビューしていきます。
- GATERON GT60 PROのスペックと性能の詳細
- 組み立てに必要なパーツと費用感
- 実測ベースでのラピッドトリガーの精度と応答速度
- Webベースドライバーの使い勝手とカスタマイズ機能
- 自作キーボードにおける利点と注意点(防水仕様、価格、プロファイル制限など)
- ゲーミング用途における適性とおすすめユーザー層

今回の記事では、GATERON GT60 PROをご紹介していくよ!
組み立てが簡単なPCBキット。防水仕様も完備

項目 | 内容 |
---|---|
製品名 | GATERON GT60 PRO HE PCB |
レイアウト | ANSI 60%(61キー) |
接続 | USB Type-C |
対応スイッチ | Gateron Magnetic Jade/Ruby シリーズなど(磁気スイッチ専用) |
ポーリングレート | 最大 8,000Hz |
レイテンシー | 平均 0.116ms(実測) |
ラピッドトリガー | 最小 0.01mm から調整可能 |
ソフトウェア | Webベース(日本語対応) |
防水仕様 | ナノコーティング(Type-Cポート除く) |
その他機能 | SOCD、Mod Tap、キーリマップ、Fnキー再配置対応 |
GATERON GT60 PROは、ケースやキーキャップ、スイッチなどを別途用意する必要のあるPCBキットとして販売されていますが、その構造は非常にシンプルで、初めてのカスタムキーボード構築にも適しています。
あらかじめスタビライザーが装着された状態で届くため、実際にユーザーが行う作業は、スイッチの装着、ケースへの固定、キーキャップの取り付け程度。必要最低限の手順で、スムーズに組み立てることができます。
今回のレビューでは、「KBDfans Tofu60」ケースに「Gateron Jade Ruby」スイッチを組み合わせて使用しましたが、問題なく組み上がり、非常に高い互換性を感じました。
一般的な60%レイアウトに対応しており、GH60配列系のケースであれば多くの組み合わせが可能です。
さらに特筆すべきはPCB全体に施されたナノコーティング処理です。
コーヒーやお茶などの飲み物をうっかりこぼしてしまっても、直接水で洗えるほどの防水性能を備えており、日常使いにおいて非常に心強い仕様となっています。
ただし、USB Type-Cポート部分は防水ではないため、ここだけは取り扱いに注意が必要です。
驚異の応答性と精度|0.01mmのラピッドトリガーを体感

GATERON GT60 PROの最大の魅力は、ラピッドトリガーがわずか0.01mmから作動可能という圧倒的な応答性にあります。
この数値は、人間の感覚に限りなく近い入力の即時反応を実現し、まさに思考と同時にキーが反応するレベル。
実際にGateron Jade Rubyスイッチで使用したところ、キーを底打ちしなくても入力が即座に反応。
FPSや格ゲーなど、ミリ秒単位の反応が勝敗を分けるシーンでは大きなアドバンテージとなります。
また、RTの中間精度は0.01mm、底部でも0.012mmという高精度で、意図しない入力や反応の遅れは皆無。実用面でも非常に信頼できます。
遅延に関しても、実測値で平均0.116msという極めて低い数値を記録。
これは、1msを大きく下回るトップクラスの性能であり、「MM Studio M6Lite+」のような超低遅延キーボードにも引けを取らないレベルです。
また、スキャンレートはシングルキー256K / フルキー36Kと、処理精度も極めて高く、複数キーの同時押しにも強く、真のフルキーロールオーバーを実現しています。
さらに、この精度と応答性は、ソフトウェアとハードウェアの連携による補正アルゴリズムによって支えられており、キーの信号ジッターも動的に排除。
特に底部付近のON/OFF判定の精度に関しては、他社製PCBと比較しても頭ひとつ抜けている印象です。
ソフトウェアはWebベースで軽快。日本語対応も◎

GATERON GT60 PROは、Webベースの専用ソフトウェアに対応しており、インストール不要ですぐに設定が可能です。
FN+Pキーでブラウザからドライバーが立ち上がる仕組みで、手軽さは抜群。
日本語にも完全対応しており、初めてのカスタムキーボードでも直感的に扱えます。
キーリマッピングは通常レイヤーとFnレイヤーの2層構造になっており、ゲーミング用途と普段使いを柔軟に切り替えられる設計。
ただし、現時点ではプロファイルの複数保存には非対応で、用途ごとの切り替えが手動になる点は今後の改善に期待したいところです。
また、SOCDクリーニングやMod Tapなどの上級者向け機能も実装。注意点として、FNキーにはMod Tapの割り当てができない制限があるものの、多くのキーに細かな挙動を設定可能です。
ライティング機能も南向きLEDに対応し、4段階の輝度調整が可能。派手すぎない控えめな光り方で、ゲーミングデバイス特有の自己主張が少ない点も好印象です。
気になるのはコストとライティング設定の粗さ

GATERON GT60 PROは高性能な磁気スイッチPCBである一方で、コスト面には注意が必要です。
PCB単体でも17,000円前後と高価であり、別途スイッチ、ケース、スタビライザー、キーキャップなどを揃える必要があります。
こだわったパーツを選べば総額3〜4万円を超えるのは珍しくなく、カスタムキーボード初心者にとってはハードルが高いかもしれません。
また、ライティングの設定自由度がやや低い点も気になるところ。
RGB対応で南向きLEDを搭載してはいるものの、輝度は4段階調整のみで、細かいカラー設定やエフェクトのカスタマイズ性はやや控えめ。
華やかなライティングを重視するユーザーにとっては、物足りなく感じる可能性もあります。
プロファイルの切り替えができない点と合わせて、利便性や遊び心のある演出面ではやや物足りない印象です。
まとめ|ハイエンド志向の自作派・ゲーマーにおすすめ
GATERON GT60 PROは、圧倒的な応答速度と精密なラピッドトリガーを備えた、まさにハイエンド仕様のPCBキットです。
0.01mm単位で反応する磁気スイッチ、8,000Hzポーリングレート、そして0.1ms台の低レイテンシーといったスペックは、プロレベルのゲーミングパフォーマンスを求めるユーザーにとって心強い武器となるでしょう。
組み立てのしやすさや防水コーティングなど、扱いやすさも兼ね備えており、キーボード自作初心者にもチャレンジしやすい設計です。
ただし、費用は完成品よりも高くつく傾向があるため、コスト重視の方にはやや不向き。また、ライティング設定やプロファイル管理など、ソフト面での制限もあります。
とはいえ、自分好みにチューニングしたい上級者や、磁気スイッチの最先端性能を体感したいゲーマーにとって、本製品は間違いなく魅力的な選択肢。
既存のキーボードに物足りなさを感じているなら、GATERON GT60 PROで理想の一台を組み上げてみてはいかがでしょうか。
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